創作全般よっこらしょ

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「笑顔のお花」 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説

笑顔のお花

 

(ん……)
ふと目が覚めた。わたしは枕の右隣を見る。
カーテン越しに、朝陽がやわらかく差し込む寝室。
そのひかりは、もう起きたらしい王子の不在を照らしている。
(早起きさん、相変わらず)
ふああ……、とあくびをひとつして、わたしも起き上がった。
とたん、何も着ていない自分に気づく。下半身を見下ろす形で。
少しだけ影があるようにも見える、胸の谷間。薄い陰毛。
(わちゃ)
と思う。
昨日もずいぶんと遅くまで、お互いに愛し合っていたからだ。
(春だもんねえ……)
季節のせいにするわけでもないが、わたしはオオカミのバケモノ。
発情期、ってヤツが存在する。いや、していた、だな。
王子と暮らすようになってから、ニンゲンの年中盛っている発情期に。
慣れもした、と言うものだ。
そう思って、枕元や、はだけたタオルケットの下を見ると。
まあまあ、たくさんの丸まったティッシュやら、封切れたゴムの個包装やら。
さすがのわたしだって、顔を赤らめる。なので、ててて、と言う感じに。
ちょいちょい拾って、ゴミ箱に捨てた。
うん、これでたぶん目立つところには、落ちていないはず。
起き抜けから一仕事を終えたわたしは、やっと下着を着けた。
かんたんなシャツとラクなパンツスタイルで、完了。
(さて、っと)
春なのに、朝早く起きた王子はどこだろ。
まあ、爆睡をかましていたのは、わたしのほうかもしれないけれど。
カーテンを開きベッドを整えて、寝室を出ようとしたわたしの鼻元に。
何やら良い香りが漂ってきた。
(――お料理?)
わたしも少しはできるようになったから、手伝うのに。火はダメだけど。
そんなことを思いつつ、寝室のドアを開ける。
キッチンの方から、良い香りは強くなり。
歩みをすすめると、何かを炒める小気味良い音も聞こえてきた。
「はーよー」
キッチンのコンロに向かって、エプロン着けた王子が、何やらしている最中。
「ん。おはよう」
背中を向けたまま、王子から挨拶が返ってきた。
「なーに?」
「姫の好きなやつ。ベーコンエッグだよ」
「おー!」
「もうできるから。あ、コーヒーだけいれておいて」
「あいー」
インスタントだけど、黒い粉w をマグカップにテキトー入れて。
王子が沸かしておいてくれたお湯を、そーっとそそぐ。
ちゃんと、ぬるま湯程度の温度にしてくれているのが、実に王子らしい。
あ、ほら。火も苦手だし、あまりに熱いのも苦手だから、わたし。
こころの中で、ありがとう、と思いつつ、コーヒー完成。
最初は、苦すぎて飲めなかったわたしだけど。
これも発情期同様、慣れたもんさ。
テーブルに、コトコトとマグカップを置く。
「はーい、お待たせしました」
「ありがとー」
王子お手製、ベーコンエッグ!
「今朝はトーストじゃなくて。白丸パンね」
「あー。こないだの?」
「うん。また市場、行こうね」
「ね。珍しいのとかたくさんあった」
『いただきます』をして、王子と朝食。はっきり言ってめちゃくちゃ嬉しい。
うん、何回もこうして過ごしてきた朝だけど。
すごくすっごく嬉しいな。
だって、さ。
わたしの視線の先に、いつも王子がいてくれて。
気遣いもすごいまわしてくれるし、何よりいっしょになっていろいろ考えてくれる。
この、バケモノのわたし、のこともだよ?
何だか、ごはんを食べながら、泣きそうになってきた。
「おうじー」
「うん?」
「ありがとうね、いっつも」
「どしたの、突然」
「んー。ほら、さ。わたしだって、だんだん火には慣れないとなのに」
「うん」
「だいたい朝は、王子が作ってくれてる」
「いいよー。だってボクの好きでやってることだもん」
「かもだけど……」
「姫は姫で良いんだよ。得意不得意は、誰にでもあるしさ」
「ん」
「だってほら。ボクがたしかにお料理してるけど」
「うん」
「狩りの腕前で、市場に持っていく動植物。獲ってくれるでしょ? 姫は」
「うん」
「だから、おあいこなんだよ。お互いのできるところを、伸ばしていってさ」
「ん」
「できないところは、補い合おうよ」
「うん」
ヤバい。これホントに泣いちゃう。
「おうじ、嫌いにならない?」
ダメと思いつつも、涙といっしょに言ってしまった。
「あったりまえじゃない。だって、ボクだけの姫だもん」
「うええ……」
目の前がどんどん、にじんでいく。王子の微笑までがぼやける。
「姫は。姫のままでいて」
「うん」
「そんなふうに、気を使っちゃう姫のことだって。ボクは大好きだよ」
「うん……!」
「ね? さ。いっしょに食べよう?」
「うん!」
手の甲で、ごしごし涙を拭って。わたしは改めて、ごはんを食べ始めた。
「王子?」
「なあに?」
「わたしも。わたしも、王子のこと大好き! めっちゃ愛してる!」
泣き笑いのわたし、笑顔の王子。
キッチンに今朝だって、こうやって笑顔のお花が咲いたんだ。
きっとずっと、んーん。
永遠に枯れることのなんてない、笑顔のお花!

 

おしまい

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このお花のように、いっしょに、ずっと笑顔で

 

 

こんばんは

久しぶりに直書きではなく、テキストエディタからコピペした、ホントはテキストエディタ使いなんだよなともみッス

今回書いたこのお話は、お友だちのdiscordに載せさせてもらったんですが

せっかくだから、ブログにも載せよう! と思い立ち

コピペしました次第です

世界観は、Twitterのお友だち、ノンキさんのものをお借りしました

ありがとうございます!

わたしが書くと、どっかしらが不幸に付きまとわれることが多く感じますけど

ノンキさんの温かくやわらかい世界観のおかげで、ほっこり思いながら書けました

これからも、姫王子のしあわせなお話、書いていきたいです!

 

おしまいまでお読みくださり、ありがとうございました