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「寮の暮らしも悪くない」その3 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説

寮の暮らしも悪くない その3

 

さてさて、翌日。
昨日は深夜まで、サフィーとガーネットの話に付き合っていて、ホントのトコは少々眠たい。そんなでもふにゃふにゃしながら、登校。歩いているうちに目が覚めてきた。だって、だって……。
「王子とおんなじクラスだもーん!(あおーん!)」
「ちょ、ひひひ姫!?」
「あ、ごめんね……」
王子とは、毎朝。王立の役所前で待ち合わせしてるんだ。んで、手はまだつながないけど、いっしょにガッコ行くの。ふふ、ふふふ。これぞ青春じゃない!
「ふふふふふ」
「ひひ、姫?」
いかん。口に出ていたらしい。
「だいじょぶよー。ちょっと幻覚妄想が」
「大丈夫なのかなそれ……」
王子が冷や汗。わたしはとにかく、嬉しくって仕方がないのだ。課題? あー、やってないけど。
王子はねー。銀に近い金髪に、整いまくった顔立ち。笑顔がやさしいんだー。服は王族だからって、特別扱いはされておらず、みんなとおんなじブレザーの制服。んでもさー。脚がこう、スラッて長くて細くて、どんなん着てもかっこいいんだよなあ。女子もブレザーだけど、そろそろ春めいてきていてあたたかい日も多いから、ブラウスの上にガーディガンでもOK。わたしかい? まだブレザー着てる。スカートの丈はそんなに短すぎず長すぎず。絶対領域からの脚線美で、常に王子を悩殺……、できるわけないじゃん。わたしはスタイル、自信ないよ。
ついでにもうちょい説明しとくと、わたしの髪は腰近くまでのロング。黒髪サラサラなのさ。すぐに跳ねるけど。
あ。むかしのわたしたちを知ってるひとは、わたしの残りの目でもある、王冠とリボン止めどうしてるの? って思うかもね。
これは、魔女に細工してもらっててね。王冠とリボン止めをいっしょにミニチュア化した、ちっちゃいキーホルダーに封じ込めてるの。スクバにくっつけてる。王子もさすがに、王冠つけて学校生活はできないから、おなじく魔女のお世話になって、キーホルダー化。城内ではちゃんとつけてるらしいけど。
――こう考えると、魔女のお世話になりっぱなしだな。なにかお礼を、かなあ。
「ね、おうじ?」
「うん?」
「魔女にお中元とか、送るべき?」
「唐突だねえ」
わたしは歩きながら、かくかくしかじか、と伝えた。
「なるほど。でも、好みもあんまりわからないから。とりあえずのところ、ボクたちが元気に生活していることが、一番のお礼になると思うよ?」
「そかー」
王子の言うとおりかもね。魔女の好みなんて、ヘンテコなのに決まってるし。合わない食べ物とか突然手渡しても、使い魔たちにそのまま流されそうだ。
「さすが王子だなあ」
「そ、そう? 感謝の気持ちを持つのはとっても良いと思うけど。姫はやさしいね」
「あ、りがと……///」
ボフン! と顔が熱くなる。いかんいかん、うろたえてる現場を見られたら、ガーネットあたりになんて言われるかわかったもんじゃない。
「おーはよーさん」
後ろから声がかけられた。カナメイシのカナメちゃんだ。
「はよー」
「おはよう。今日も大荷物だね」
王子の言葉に見やると、スクバの他に、『DEAN & DELUCA』のトートバッグ。しかも膨らんでる。
「んー。ガッコのPCには、『秀丸』入ってないから。文章書きにはつらい環境なのだよ。致し方なく、ノートPCと資料を運ばざるを得ぬ」
「それ、ぜんぶがそうなの?」
わたしの問いに、
「むー。もちろんwebで資料検索できるけど。文字をたしなむ身としては、パラリパラリと紙のペイジを繰りたいのだ」
「難しいもんだねえ」
「お疲れさま。良いのが今日も書けるといいね」
王子はさすがだ。言葉のひとつひとつがそつない。
あ、っとね。
カナメちゃんは、カナメイシのバケモノなの。そそそ。わたしとおんなじ、魔女の森出身、魔女の森学園から城西高等学校に進学した、いわゆる幼馴染。
姿とかかっこうはね。わたし同様にニンゲンの少女のものだよ。これも魔女がかけてくれてる魔法なんだ。通学はどうしているのかと言うと、カナメちゃんの遠い親戚に当たる、かつての王様ドラゴンがおうち、つってもアパートだけど、を手配してくれてるんだって。だから、寮には入ってないの。
その代わりの条件? みたいなもので。これも遠い親戚の子である女の子(ゆうちゃん、て名前だったかな)のお世話を、仰せつかっているらしい。子どもさんがあんまり得意じゃないわたしから見たら、すごいよなあ、って感嘆するよりないさね。
カナメちゃんはむかしっから、小説家を目指してて。読んだ本の数はそれこそ星の数。いまはこうして、マイPCを使いつつ、文芸部の若き新星(と本人が言ってた)として文章を書きまくってるみたい。
それこそ、おねしょの回数だってシェアしあってる仲だから。わたしも応援してるんだ。
などと考えてたら、王子とカナメちゃんは大いに話が盛り上がってる。嫉妬? しませんよー。だってカナメちゃんにはもう、許嫁さん、いるんだもん。どんなバケモノ(ニンゲンかもしれないけど)かは知らん。
「アレだな。そのうちわたしの書き下ろしで、合唱部にうたを差し入れてみるのも良きかな。まあまだまだ、実力が伴ってはいないのだが」
「楽しみです。作曲も?」
「肯定。わたしが作る」
「え? カナメちゃん、作曲できるの!?」
「ソフトのおかげだ。いちからはとても作れぬ」
「それでもすごいなあ」
MacBook Proなれば、赤子の手をひねる如くかんたんだが。わたしは文章書き、『秀丸』使い。Surfaceが今の相棒」
「なんだかわかんないや」
テキストエディタのこと。プロさんも愛用しているみたいだよ」
王子が注釈を入れてくれた。タイミングといい言葉といい、だから大好きよ、王子。
「そっか。カナメちゃん、プロとおんなじの使ってるんだね」
「少しでも、親(ちか)しい身となりたく、な」
「かなうよ、夢。だってカナメちゃんだもん」
「おぅ、ふ、ありが、とう……」
あらら。珍しく照れてる。
「チャイム、もうじき鳴る!」
王子の言葉で我に返った。いかん。ダッシュだ!
あー、課題。結局できないままだったなあ……。

 

 

続きます、次で終わりです

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