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「姫とボクの」02 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説

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姫とボクの 02

 

 

 

結局のところ、お昼ごはんはボクが作り直して。姫が作ってくれていた麦茶と一緒に、美味しくいただいたよ。
「ごちそー」
「さまでしたっ!」
姫に合わせて、ボクも言う。
ふう、おなかいっぱい。
「わたし洗うよ」
「あ、ありがとう」
ボクも、自分の食器をシンクまで運ぶ。お互いの細かいこととか、協力し合わないとね。一緒にこの先、ずっとずっと過ごすんだもん。

「洗い物は好きー」
「そろそろお水も、冷たい季節だけど?」
「うん。だからなの。身体がしゃんとするもん」
「ボクは苦手だ」
「あーね。ほら、わたし元がバケモノだから」
「そんなもの?」
「たぶんね」
話しながら、姫がぱちゃぱちゃ洗い物。ボクは終わったものを、水切りに乗せていく。
(バケモノだから、か)
気にしなくていいって、ボクはかなり言ってきたつもりだったけど。まだ姫は、引っかかってるところがあるのかな。
だけどそれがもし、姫のどこかの拠り所なのだとしたら。否定じゃなくて、肯定、認め合うことが必要だよね。言うならボクだって、力も何もないニンゲンだもん。

ふと気づくと、姫がこちらを見ている。
「悩んでる顔」
ちょこっとだけ頬を膨らませるようにして、姫が言った。
「そ、そう?」
「うん」
「言えることなら、言ってね」
今度は微笑の姫が言った。
「うん。その、さ。姫はやっぱり、バケモノってこと。気にしてるのかな。少しばかり悲しいな、って」
「あー。気にしてるわけじゃないのよ。いや、気にはなってるけど。でもそのことを忘れちゃうと、わたしワガママいっぱいの、嫌な女になっちゃいそうで」
「そんなことないよ」
ちょっと力をこめて、ボクは言う。
「んーん。生きてくってそんなものだよ? 年上おねーさんが言うんだから、信じて大丈夫だよ?」
「う、ん」
「ま、とにかくわたしはおーじが大好きだから」
「ボクも、姫のこと大好き」
もっかいキス。もちろん時々ケンカもするけど、こんな時間はすごく嬉しくなってくる。

「おーわった」
「お疲れさま」
麦茶をお揃いのマグに入れなおして、テーブルに着く。姫が首をコキコキ。
「午後はお買い物?」
「うん。市場もちょっと覗きたいし、お野菜少なくなってきたし」
「お野菜なんて……」
「草と一緒?」
ずっと前に姫が言ってたこと。お野菜は草であって、食べ物ではないと言うのが姫の認識なんだよね。
「わかってるのに食べさせるなんて」
「ダメです。栄養が偏りまくります」
「うー」
「この季節だから、カボチャとか美味しいよ? 甘く煮付けたの作るよ」
「むー。おーじが、そう、言うな、ら」
ボクは笑って、もう一回姫をなでなでした。気持ちよさそうに目を閉じている姫が、めっちゃかわいい。
「一緒行くよ」
「わかった。美味しそうなの探そう?」
「うん」
目を閉じてても、にこにこ姫。
まいったな、今日も惚れ直しだ。

 

 

 

続きます

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もうこの時には、ボクの心はキミのものだったんだ

 

おしまいまでお読みくださり、ありがとうございました。