創作全般よっこらしょ

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「王様とサカサと羞恥心?」 わるい王様とりっぱな勇者 二次創作小説

王様とサカサと羞恥心?

 

 

 

「少々お話しがございまス、王様」
執務の合間、休憩をはさんでいる時にサカサが言った。
わたしは、なんだろうと言う顔でサカサを見る。
「ゆうサンのことですが」
「あ。ああ」
口が重たくなってしまう。
なんと言っても、わたし自身が娘のゆうに対して”あまあま”なことを、自覚しているからだ。
それを読み取ったように、
「おわかりカトお察ししますガ。もう少しばかり、王様からのご注意ヲ」
やはりそうだった。ううむ、と言う表情になってしまっているだろう。
「しているつもりなんだがね」
わかっております、と言った感じでサカサはうなずいた。が。
「ゆうサンも中学1年。言うなれば『お年ごろ』デス」
「そうだね」
「先日もでしたガ。その」
珍しく、サカサが言いよどんだ。そして、ちょっと頬を赤らめたかと思うと、
「わ、ワタクシの前で。堂々とお着替えヲ」
思わずわたしは、天を仰ぐ。謁見の間の天井が見えただけだったが。
「またか」
「『またか』ではございまセン」
「う、うむ」
「ワタクシも王様も。こう言ってはなんですガ、魔物デス。だからこそ、ニンゲンであるゆうサンにはりっぱに成長していただきたいト」
「そうだね」
「ニンゲンの中での大切な感情のひとつガ、羞恥心、である。そう考えマス」
「ううむ」
「しかしながら。残念なことにゆうサンはあまりそれを……」
確かに、サカサの言う通りだった。
だが。しかしながら、無理もない。ゆうの幼少期はおろか、小学校に進んでも一緒にお風呂に入り、水浴びをして。遊んでいたからだ。
(この、ドラゴンであるわたしと)
言い訳を心でする。
(嬉しかった。種族に差はない、と言うことを教えてきて。それを実践するかのように、わたしに慕ってくれているのだから)
(父親として。『おとうさん!』となついてくれて)
(そのゆうが。手元を離れる第一歩を踏み出そうとしている……)
「お、王様!?」
サカサの声に気づくと。わたしはいつしか滂沱の涙を流していた。
「ワタクシ、そこまで」
「いや、わかっているよ。すまない」
差し出してくれたティッシュで、ちーん! としてから。
「いよいよゆうが、お嫁に行くのか」
「ししししっかりなさってくだサイ!」
目の前で、サカサがわたわたと慌てている。
「サカサも。よく面倒を見てくれたね」
「王様ー!?」
わたしは、サカサにガタガタ肩を揺すられて、やっと現実に戻った。
「あ。ああ。すまなかった。ちょっと未来に行きすぎたか」
ほっとした表情のサカサ。大きく息をついている。
「で、デスので。もう少々で結構デス。ゆうサンに」
「わかった。気をつけるようにしよう」
涙もちゃんとわたしは拭いて、もう一回ちーん! として。
キリリと執務に取り掛かる表情になる。
「ありがとう、サカサ」
「いえ。このサカサ、身の朽ちるまで王様にお仕えいたしマス」
深くわたしはうなずいて。休憩から戻ろうと心を切り替えた。

 

 

 

おしまい

 

 

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サカサだって、泣くこともあります