「祝福の光」 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説
「祝福の光」
「よ……。朝だよー」
「にゃー」
「朝だよ、姫」
「むー」
「ひーめー」
「有り余ってヘラる感情なんて」
「?」
「萎えるし映えないもういらない!」
「いや、『メンヘラじゃないもん!』歌ってる余裕あるなら、起きて」
「残酷な王子のテーゼだ。こんなに眠いのに」
「はいはい。版権に引っかかりかねない発言は謹んでください」
「そんなに起こしたい?」
「って言うか、ごはんにしようよ」
「ちゅーしてくれたら起きる」
「もー、とに。ちゅ」
「へへへー」
「わ!わわ!」
はい、朝からいちゃらぶしてる会話に付き合ってくれて、ありがとうね。
そんなことをあたまの隅っこで思いつつ、わたしは王子に抱きついた。力量的にはビミョーにわたしの方が上回っているので(姫の姿の時ね)、王子をベッドに引き込む形になっちゃう。このままもっといちゃいちゃしても良いんだけど、確かにおなかもすいてるから、もっかいちゅーしてわたしは起き上がった。
「ごはんなーに?」
「昨日の夜の残り。カレー」
「えー、朝から?」
「だって長雨で、市場に行くのをどなたかがサボってるから」
「カレーを発明した人は天才だよね。大好き。ガンガン食べられる、朝から」
「もー」
そう言いつつも、にっこりしてくれる王子。カレーよりも大好きだ。むしろ愛しています。
わたしはベッドから出て、枕元に置きっぱのヘアブラシで軽くブラッシング。
「伸びてきたねー」
「んー。ちょっと整えたいけど、美容院も高いからなあ」
「ボクで良ければ、するよ?」
「本当!?」
起こしてくれて、お料理できて、お掃除とかその他できて、美容師さんにまでなれちゃう王子、改めてだけどすげえな。
「うん。姫の髪質だったら、簡単にできると思う」
「ありがとー!」
「んーん。ごはん食べたらしようよ」
「うん!」
王子が寝室のカーテンを開く。長く続いていた雨も今日はやんでいるみたいで、気持ちのいい朝陽が入ってきた。これは今日こそ市場に行かないと。
「王子も一緒に行かない?」
「市場?」
「うん」
「んー。お洗濯の量にもよるけど」
「あー、晴れたから?」
「うん。でもせっかくだから一緒に行って、珍しいのあったら、また買おうか」
「やったあ!」
キッチンに向かいながら、また王子に抱きついてしまう。んもー、好きすぎてつらいぜ。
お気楽に見えるこの暮らしが落ち着くまで、本当にいろんな苦労があった。
特に王子だよね。だってその通り、一国の王子だったんだもん。
だけど、王子はわたしとの生活を選んでくれた。何不自由無いだろう王族の暮らしから。ワガママいっぱいしちゃってるわたしだけど、そのことには心の底から感謝してるんだ。
だから。
わたしもできることは、協力してやってるよ? あ、オーブンはやっとちょっと使えるようになったものの、火は苦手なままだけどね。
あとは、王子のボディガード。この森には、魔女の森と違って凶暴な魔物はあんまりいないけど、進む道々にちっちゃいヤツが出たりもする。そこで、わたしの出番ってわけ。
一緒に生活するって、すれ違ったり大変だったりすることもたくさんあるけど、わたしは嬉しいな。王子も嬉しく思ってくれてたら、良いな。
ちょっとわたしの胸の中が、しん、てした。
「んー。これだけ干すと壮観だねー」
「ありがとうね、手伝ってくれて」
「んーん」
最初は恥ずかしかったけど、今では見慣れた光景。わたしと王子の下着が一緒になって、ひらひら風にそよいでる。それを見てるだけで、すっごい嬉しさが込み上げてくるんだ。
「じゃ。美容院やさん、しよっか」
「うん!」
王子の手を取った。温かくてやさしい手、繊細で愛おしい手。大好きな人の手。
「王子?」
「うん?」
「よろしくね、これからも」
「こちらこそだよ」
だいぶ高くのぼったオヒサマが、透き通った祝福の光を投げかけてくれてた。
おしまい
こんばんはー。
姫と王子のお話は、書いているだけで楽しい、オトクな精神してるともみッス。
とは言え、いつも通り姫と王子がイチャコラしてるお話ですが、これ、またもやお友だちのノンキさんの世界観をお借りしています。って言うか、いっつも無断で借りてしまい、申し訳ないです。ごめんなさい。
本当に本気で、姫と王子のふたりには、こころから笑い合える。そんな暮らしを送って欲しくて。まだまだ稚拙ですが、応援の意味も込めて二次創作しています。
これからも書き進めていっちゃうと思いますけど、どうか呆れることなくお付き合いください。よろしくお願いします!
おしまいはこの画像を。
王子がまだ盲目ですが、姫がボディガードとして働いている一枚w
これを見つつ、イメージ膨らませました。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。