「姫とボクの」03 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説
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姫とボクの 03
市場へ向かう道々、吹き抜ける冷たくなってきた風のことが話題になった。
「前にね?」
「ん?」
「雪がひどくて、洞窟に入っていたことあったの、一緒に」
「そっか。あんまりボク、覚えてない」
「無理ないよ。王子、疲れ果ててたもん」
姫が言うには、その時にボクが凍えそうになっていて。慌ててオオカミ姿で、しっぽを掛け布団代わりにしてくれたんだって。
「ぬくぬくになったからか。王子、笑って寝てたよ」
「うあー、覚えてない」
「いいんだって。わたしのとっておきの思い出だもん」
ちょっとだけイタズラっぽく、姫が笑った。ボクの左腕をとって、ギュッてしてくる。
「あーもー。好きすぎてつらいぜ」
「ボクもなかなかにつらいぜ」
歩きながら笑い合う。そうこうしている内に、町の中心部に来た。数は少ないけれど、いろんなお店が建ち並んでいて、見て回るだけでもわくわくしてくる。
「お魚、最初?」
「んー。できるだけ新鮮なうちに帰りたいから。最後かな」
「りー。おやちゃい?」
「ですねえ」
情けなさそうな表情を、姫が浮かべる。
「ちゃんと作るから、安心して。つか、一緒に作ろうよ」
「ん」
コロコロ表情が変わる。オオカミだけれど、コネコみたいだ。
予定通りカボチャの半分に切ったやつと、美味しそうなチーズパンがあったので、それも購入。少しやすんで帰ろうと言うことで、いつもの喫茶店に入った。って言うか、ドトールだけど。
「ふふふ。わたしはホットコーヒーに目覚めてしまったのだ!」
「おー」
「おーじは何にする?」
「じゃ、ボクもおんなじ」
店員さんから受け取って、2階の席に着いた。小さいけれど町並みが良く見えて、気持ちも休憩モードに切り替わってくる。
「目覚めたけど、ホットはあちーぜ」
「まあ、ホットだからねえ」
当たり前すぎる会話だけど、それもまた楽しい。
「しかし、覚醒したからには。この能力(チカラ)を暴走させるわけには……」
「思いっきり厨二病」
「おーじをこの手にかけるわけには、わたしが許せない」
「殺されちゃうのボク」
なんかよくわかんないけど、美味しそうに飲んでるから、いいか。
「でも、ブラックは苦いよね」
「無理しないで、お砂糖とか入れていいんだよ?」
「や」
「なんでまた」
「だって、おーじと一緒がいいんだもん」
ボクの方が、ほっぺた熱くなってくるね、これ。
続きますのだー
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おしまいでお読みくださり、ありがとうございました。