「王子、風邪をひく」 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説
王子、風邪をひく
「あー、あるね。熱」
わたしは横になっている王子から、体温計を受け取って言った。37,9℃と言う、ビミョーな体温。王子は少し苦しそうに咳き込んでいる。
「寒くなってきた」
咳き込みながら、ベッドの中に潜り込む王子。いつもの端正な顔立ちが、少しばかり熱に浮かされて、なんとも言えずに色っぽい。なんて考えてる場合じゃないね。
「うん、寝てて。何か入りそう?」
「んー。液体なら」
「ゼリードリンクあったはずよね。それとおくすりか」
「熱とか風邪のは無いかも」
「そっか……」
「ちょっと調子が戻ったら、病院行くよ」
「そうだよね。とりあえず取ってくる」
わたしはキッチンの冷蔵庫から、ゼリードリンクを取り出して、寝室に戻った。気のせいか、さっきより王子の顔が赤くなったように思える。
「わ、冷たくて気持ちいい」
そう言うと王子は、ちゅーちゅーと飲んだ。
「ふぅ」
「お疲れさま。少し安心した」
カラを受け取って、再び横になった王子の首元まで、お布団を引き上げる。
「なんかごめんね」
「そんなことないよ。お互いさま」
「少し寝てみる」
「うん。そばにいるから、何かあったら」
「ありがとう」
王子は目を閉じた。こんな時なのにまた、火照っている表情に色気を感じてしまった。
(いけないいけない)
静かにして、様子を見ていよう。わたしも看病してもらったこと、たくさんあるしね。こころの中でわたしは、安心してね、と呟いた。