創作全般よっこらしょ

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「姫とボクの」01 嘘つき姫と盲目王子 二次創作小説

姫とボクの 01

 

 

思えばずいぶんと遠くまで来た。
姫との新天地を求めて、元の王国からだいぶ離れたこの、小さな港町。

「ここにしようよ」
「森の中じゃないけど?」
「んーん。近くに森も山もあるし、それに」
「?」
「王子と一緒だから!」

そう言った姫は、パッと花が咲くように笑って。照れくさそうに、もう一度笑った。
ボクも目を閉じ微笑んで、うなずいた。そして始めた新生活。
日記の代わりにも、その暮らしをこうして書いていきたいと思う。

 

それにしてもまったく。
この町のはずれ、森とのさかいめあたり、格安の物件を購入して安寧な暮らしを始め。
なんだかんだと一年は経とうとしているころ。
どこから嗅ぎつけたのか、父や母から手紙がポロポロと届き始めた。

いわく、
「今ならまだ許す」
いわく、
「帰る日を心待ちにしています」

冗談じゃない。
今のボクは、いや、ボクたちは。一年は経ったとは言え、新しい暮らしに懸命で必死で、それどころじゃないってのに。
今日も届いていた手紙を、くしゃくしゃぽいして。ボクは洗濯物を庭地に設置した物干し台に、ちゃんとパンパンしてから干した。
こうしてお洗濯できるようになるまで、どれだけ姫のお世話になっただろう。
また逆に、姫にどれほどいろんなことを教えてきたことか。

風にそよそよしている姫の下着に、ボクはちょっと顔を赤らめ、
「終わったよー」
と、姫に声をかけた。姫は苦手な「火」を克服すべく、オーブン料理にここのところ挑戦し続けている。今もキッチンで、早めのお昼ごはんを作ってくれている。はずだ。

「おーじー」
なんとも情けない声。
「どしたの」
ボクもキッチンへ向かう。
「焦げた」
「あー」
ピザトーストをお願いしていたんだけど、オーブンの中にあったのは、消し炭をトッピングされた黒い何かだった。

「怖くて、取り出せなかったの」
しゅん、としてしまった姫に、ボクは、
「でも、点火することはできるようになってきたじゃない」
「うん……」
「ゆっくりでいいんだよ?」
「うん」
「ボクだって。お洗濯とかいろんな家事、なかなか覚えられなかったもん」
「ん」
姫が体重を預けるように、抱きついてきた。
「そう言ってくれる王子、大好きだ」
「うん」
姫のあたまをなでなでする。
「頑張ってる姫も、大好きだよ」
「ん」

目を閉じたままで、姫が顔を上げる。
ボクは心を込めて、その口唇にキスをした。

 

 

 

続きます

次のお話はこちら

 

tomomikoshigaya.hatenablog.com

 

 

 

 

こんばんは。

ちょっとだけボロボロメンタルから回復しつつある、お疲れともみでっす。

 

えーっと、いきなり連載もの書き始めたわけですけど。

姫と王子のその後、やっぱりもっと書きたかったんですよね。

ちなみに、こちらの記事に書いた小説の続きみたいな感じになってます。

 

tomomikoshigaya.hatenablog.com

たしかこれ(確認しろよわたし)。

 

一気に全部は、さすがに書ききれないので。連載ものとさせていただきました。

途中で一次創作とかが入ってくるとは思いますけど、しばらくの間はこれを中心に、更新していきたいなあ、って思っています。お付き合いくだされば嬉しいです!

 

秋はどっか行っちゃって、もう冬に突入してますけど。

皆さまもご自愛くださいね。

 

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ボクの隣りは、キミの隣りだよ

 

 

 

おしまいまでお読みくださり、ありがとうございました。