「ありがとう」 嘘つき姫と盲目王子 二次創作詩
何を得て何を失い
そしてまた
わたしは何を手に入れたんだろう
茫洋とした記憶の中を
懸命に探り
手を伸ばしてみても
触れられるものは何もなく
だけれどもあなたの
あなたの笑顔だけが近くに揺らいでいて
間違ったことをしてきたのかな
誰かの涙の上に
わたしはいるのかな
もうかなしい顔を見るのは
充分に体験してきた気がするの
かなしい結末を
あなたはどうして微笑んでいるの
わたしが怖くないのかな
わたしがわたしがわたしわたし
(姫)
それはわたしなのかな
姫のわたし……
「おう、じ」
霧のかかった頭の中から
その一言が急に浮かんだ
やわらかく笑うあなた
わたしの王子
わたしの最愛の王子
「王子!」
あなたが抱きついてきた
(姫!)
もらった花束を崩すことの無いよう
しずかにわたしは地面に置いて
あなたの背に不格好な腕を回す
鋭い刃物で頭をえぐられたように
記憶が一気によみがえる
愛おしい旅の日々
あなたの隣りにわたしは
いてもいいのね
居場所があるのね
あんまり手間を掛けさせるんじゃないよ
見知った森の魔女のつぶやきが
ぱちんと弾けて耳に入った
これからわたし
あなたと一緒に
暮らしていけるんだ
王子と一緒に
そっか
そっか……
あなたが笑う
わたしも笑う
わたしたちの間で笑みが揺れる
(ありがとう)
「ありがとう」
ありがとう
おしまい
こんばんは。
まだ本調子になれないともみッス。
さてさて。
いつか、このシーンの詩を書いてみたいなあ。
そう思って幾星霜、やっと書いてみました。
原作のゲームからかけ離れてきていますが、どうしても姫と王子には、いままでつらいことがたくさんあった分、幸せになってほしくて。
姫の記憶を蘇らせています。
原作を大切にされているファンの方から見れば、邪道もイイトコでしょうけど。それではあっても、こう書きたかったんです。
もちろん、記憶を失ったままの姫と王子のその後も、温かいものに包まれていくだろうなあ。そう思います。
ではあっても、失明の治った王子と記憶の蘇った姫。このふたりには、いつまでもずっと笑顔でいてほしくて……。
それに、この設定に持っていかないと、今まで書いてきたわたしの二次創作がほぼ全て、水泡と帰してしまいますしw
そんなこんなで、余計なこととは思いつつ。詩のあとにこんな、ダラダラ説明文(イイワケ文?)を書いている次第です。
またこのシーンのお話を書くことも、今後あると思いますけど。
「あー、こいつは姫王子がとにかく幸せなら、そんで満足いくわけね」
と、お思いくださいまし。でも、ほんとはそれだけじゃないのよ?
などなど、ずいぶん長く書いてしまったので、おしまいーw
嘘つき姫と盲目王子は、本当に尊いのよ……。
おしまいまでお読みくださり、ありがとうございました。