「交換してこそプレゼント」 わるい王様とりっぱな勇者 二次創作小説
むふー。
できたっ!
作ってた時間、ほぼ半日。がんばったよ!
「あれ、お絵かきでしたか、ゆうサン」
「わあ! 見ちゃダメ!」
サカサが、机に広げていたわたしの絵をのぞき込んできたので、あわてて身体で隠した。
「そんなぁ。でも、上手でしたネ」
「ほんとう!?」
「デスとも」
うんうん、とうなずくサカサ。
「ぜーったいに話しちゃダメだよ? おとうさんに言ったら、サカサのこと嫌いになるよ?」
「しませんしまセン!」
わたしはやっとにっこりして、
「うん! 信じてる!」
言いつつ、描き終えた画用紙をくるくるする。
「デハ。見てしまったおわびに、コレを」
サカサがスカート(?)の中から、きらびやかに光る虹色のテープを出した。いつも思うんだけど、あの中どうなってるんだろ?
「コレで結んだら。りっぱなプレゼントになりますヨ」
「わぁ。ありがとう!」
「いえいえ」
わたしはサカサにも手伝ってもらいながら、くるり、と画用紙にリボンを巻いた。
うん、すごくかっこいいプレゼントができたよ。
「おとうさん、玉座のとこ?」
「はい。今日はまだ執務中デス」
「お仕事かあ。じゃあ、終わるまでここで待ってよう」
寝床に広げていたおりたたみ机を、ぱたぱたたたむ。
「お呼びしましょうカ?」
「んーん。おとうさんのお仕事は、じゃましたくないよ」
目を細めて、にっこりのサカサ。
「さすがゆうサン」
急激にわたしはねむくなってきた。半日かけて描いてたから、やっぱり疲れたのかな。ふあーと、あくびが出てしまう。
「王様の執務が終わりましたら、ゆうサンを起こしにきますヨ」
「ありがとう。ちょっと寝るね」
ころんとわたしは横になる。わらのお布団だけど、おとうさんのにおいもするから大好きなんだ、わたし。
サカサに、おやすみなさいを言って。わたしはたちまち眠りに中に入ってしまった。
わたしは今日の執務をすべて終えて、ゆうが横になっている寝床に帰ってきた。そしてゆうが大切そうに胸に抱いている、なにか円筒状のものをサカサに問うた。
「なんだろう、これは」
「ゆうサンからお聞きになったほうが。起こしますネ」
「いや、寝かせておこう。疲れたんだろう」
「そうデスか?」
「わたしもちょっと休むよ。ありがとう、サカサ」
「いいえー。王様とゆうサンのためでしたら、これくらい」
言い終えたサカサは礼儀正しく挨拶をして、寝床から出て行った。
「さて」
改めて、ゆうをくるんでやるように、巨体を横にする。ときおりだが、この小回りの利かない身体が悲しくなる。もっと小さければ、ゆうとたくさん遊ぶこともかなうだろうに。
悪いことに、しっぽがゆうに当たってしまった。うーん、と言いながらゆうが目を覚ます。
「おとうさん」
「ああ、待たせてしまったね」
「んーん! あのねあのね?」
「なにかな?」
「今日って、クリスマスって言うんだよ。だから大切なひとに、こころをこめたプレゼントをするんだよ」
「そうだね。ニンゲンたちの風習だね」
「だからね、わたし」
ゆうは、ちょっとイタズラっぽい光を瞳に宿して、
「おとうさんにプレゼントする!」
「おっと。それは嬉しいな」
ゆうは胸にかき抱いていた円筒形のもの、画用紙を。はいっ! とわたしに手渡した。凶暴な爪で破くことのないよう、慎重にわたしはそれを広げる。
「だいすき な おとうさん」
その言葉とともに、わたしの似顔絵が描いてあった。
親として保護者として、ある程度予想はできていたものの。こう実物を手にすると、感慨も新たになる。それにしても、もうひらがなを書けるようになったのか。フローラが教えてくれているとは言え、その成長スピードに驚かされる。同時に、ほんの幾ばくかの寂しさも。
「ありがとう、ゆう」
「へへー。びっくりした?」
「ああ、とても」
「やったあ!」
ゆうが飛びついてきた。このへんはまだ無邪気なんだな。と、親視点から分析してしまうわたし自身に、少々嫌気もあった。だが、これは嬉しいプレゼントだ。
「わたしも、ゆうのことが大好きだよ」
「ありがとう!」
「じゃあ、わたしからのプレゼントだ」
「え!?」
「プレゼントは交換し合うものだろう?」
言いつつ、ゆっくりゆうの身体を下におろす。そして寝床のわらの隅に、そっと隠しておいた花束を取り出す。これまた壊してしまわぬように。
「お花だ!」
「どうぞお受け取りください」
慇懃(いんぎん)にわたしは、まるでプロポーズのようにゆうに渡した。ゆうが飛び跳ねるように喜んでいる。
「ステキだね、クリスマスって」
「そうだね、嬉しくて良い日だね」
もう一度、ゆうがわたしの首に抱きつく。思わず目が細くなってしまう。
「遅くなっちゃうけど、わたし。サカサやコンコ、フローラにもプレゼント描こう」
「きっと喜んでもらえるよ」
「うん!」
ぬくもりが寝床に満ちる。ずっと続くであろう、安心のぬくもり。わたしたちを見ていたかのように、冴えた夜月がきらきらのひかりを降らし始めた。
(ありがとう、ゆう)
おしまい
ステキなクリスマスを過ごせましたでしょうか?
おしまいまでお読みくださり、ありがとうございました。